滞納家賃の回収方法
個別交渉で滞納家賃を回収することは簡単ではありませんが、法的手続によることで、より効率的に回収が可能な場合もあります。滞納を根本的に解決するには建物明渡請求が必要ですので、建物明渡請求と並行して、家賃回収を進めるのがよいでしょう。当ページでは、法的に滞納家賃を回収する方法、および回収行為に移る際の注意点をまとめました。
滞納家賃の回収方法4つ
借主への連絡
家賃滞納は最初に借主へ連絡して、滞納状況が生じた理由の「確認」を行いましょう。大半の滞納の理由は、入金のうっかり忘れや、多忙で入金する時間がなかったというものです。そのため、連絡して「確認」するだけで解決するケースがほとんどです。
なお、家賃に関する業務を管理会社へ任せている場合、滞納に関する業務は管理会社が行うため、家主が確認をする必要はありません。
ただし、管理会社の中には積極的に動かない会社もありますので、管理会社からの報告は必ず目を通し、滞納が生じた場合の対応状況や対応予定についてはきちんと確認する必要があります。
賃料請求の督促状を送る
滞納した家賃の支払いを促したにも関わらず、いつまでも入金が確認できない場合、借主に対して「督促状」を送付します。
督促状には、物件名と部屋番号、滞納している合計金額、支払期限、支払先を明記します。内容証明郵便なら裁判の証拠書類として利用しやすくなります。
支払を促すための書類ですので、くれぐれも感情的な表現を交えず、客観的な事実を必要な点のみ記載した、冷静な文面にまとめるようにしましょう。
支払督促手続
督促状に記載した期日までに支払いが行われず、かつ支払い意志の有無が不明な場合、簡易裁判所に支払督促手続を申し立てる方法があります。
相手から異議が出なければ、財産の差し押さえ(強制執行)が可能になる手続きです。
ただし、支払督促は立ち退き要求(建物明渡請求)はできませんので、この手続きを用いることが効果的な場面は余り多くありません。原則として建物明渡請求訴訟において、家賃の請求をすることが効果的です。
建物明渡請求訴訟
家賃滞納が続いているにも関わらず、一向に家賃が支払わない場合、大家さんは借主に対して建物明渡請求訴訟を起こすことができます。建物明渡を命ずる判決が出れば、強制的に物件から借主を追い出すことができます。
建物明渡請求訴訟では、法的に有効な主張や証拠提出をする必要があり、裁判所で開かれる口頭弁論に出席することも必要となるため、知識が必要であり、また時間や手間もかかります。
しかし、相手を強制的に退去させるには、訴訟による他ありません。家賃滞納を解決する手段としては、訴訟が最も確実かつ効果的な方法です。
なお、訴訟は対応によって判決に至るまでの期間が変わります。慣れた弁護士であれば提訴から判決まで1~2ヶ月のところを、慣れていないと半年程度かかってしまう場合もありますので、注意が必要です。
滞納家賃を回収できた事例
保証人の親族からの入金で全額回収
埼玉県にある一軒家を貸し出していたというSさん。2018年から徐々に家賃の支払いが遅れ始めたものの、今までの長い関係もあったことから、当初は強く支払いを求めることはありませんでした。
やがて家賃はほぼ支払われなくなり、借主はSさんからの連絡にも出なくなるように。この時点でSさんは弁護士へ相談し、具体的な回収活動へと入りました。
Sさん自身は、弁護士に依頼したのみで特に何もやっていないとのことでしたが、結果的には保証人の親族から入金され、滞納家賃の全額回収へと至りました。
強制執行や保証人の不動産競売などを経て全額回収
経営するアパートの一室で家賃滞納が始まり、家賃減額等の対策を施したものの、支払いがないまま長期間が経過。滞納分は30ヶ月分で合計195万円でしたが、大家さんが弁護士に相談した際、回収は諦めていたとのことでした。
部屋から退去してもらうことだけを求めて弁護士に相談したところ、弁護士は「家賃も回収しましょう」と大家さんへ提案。以後、強制執行や保証人の不動産競売などを通じ、34か月という期間を経て全額回収に至りました。
滞納家賃の回収で注意すべきこと
延滞損害金の請求も可能
滞納家賃の回収に際し、滞納から経過している期間に応じ、遅延損害金を請求することが可能です。
遅延損害金とは、家賃滞納期間に応じた利息に該当するものです。原則として年利14.6%を上限とし、賃貸借契約書に記載されている利率で請求します。契約書に書かれていなくても法定利率(通常は3%)の遅延損害金は請求可能です。
遅延損害金は、相手に対して家賃滞納の予防効果や滞納中の家賃の早期支払を促す効果が期待でき、また実際に滞納により生ずる諸費用等に充てることもできるので、契約書に盛り込んでおくとよいでしょう。
預貯金・不動産の調査も可能
裁判で勝訴して強制執行を行う際、その前提として債務者の財産の全容を把握する必要があります。令和3年4月からの民事執行法の改正により、裁判所の情報提供命令により債務者の預貯金・不動産などの情報を調査できるようになりました。
この法改正によって、強制執行による債権回収の実効性がより高くなりました。
費用対効果を加味して行う
仮に裁判で勝訴したとしても、相手に資産がなければ債権回収は困難です。もっとも、物件の任意の明渡しが期待できない場合は、建物明渡請求訴訟の提起が必要ですので、合わせて滞納賃料を請求することが通常です。
積極的に訴訟を提起し、早期解決を図ることが肝要です。
管理会社は滞納家賃の回収はできない
賃貸物件の管理会社は「家賃回収」や「滞納の督促」を行うことができますが、法律上、訴訟等の法的手段で債権を回収することはできません(弁護士法に抵触する場合があります)。
滞納家賃の回収を法的手続きを用いて行う場合、貸主本人もしくは弁護士などの専門職でなければ、行うことができません。
違法性のある督促方法をしない
家賃滞納に対して感情的になる余り、違法性のある督促を行わないよう注意しましょう。
違法性のある督促とは、例えば深夜や早朝の訪問、督促の貼紙、近隣住民への告知、脅迫的な言動などです、これらの行為を行なった場合、名誉毀損や恐喝などの刑事罰の対象となる恐れがあります。
滞納家賃を督促する際には冷静になり、法的に認められた方法で行うようにしてください。
これはNG!違法性が高い滞納家賃回収方法6つ
家賃滞納が続く借主に対し、大家さんが強いストレスを感じることはやむをえません。中には怒りを感じるなど、感情面が強く出てしまうことがあるかもしれません。
ただし、家賃滞納に対して感情的になることは十分に理解できるのですが、感情に任せた回収行動は違法性を問われ、結果として大家さんに不利な展開になることもあります。
家賃滞納に対しては、感情を抑えて冷静に対応しなければなりません。たとえば、次のような回収行動は違法とされることがあるのでご注意ください。
電話をかける時間帯が遅い
夜9時以降、または朝8時前などに電話や訪問をして家賃支払いの督促をした場合、借主の平穏な生活を侵害する行為として違法性を問われる恐れがあります。
勤務先に電話をする
借主の勤務先に電話をかけて第三者が出た場合、話す内容によっては、借主のプライバシー侵害に問われる可能性があります。また、電話をきっかけに借主の会社内での信用失墜につながった場合、名誉毀損や精神的苦痛等を理由に損害賠償を求められる可能性もあるでしょう。
玄関ドアなどに貼り紙をする
玄関ドアなどに督促の貼り紙をした場合、借主のプライバシー侵害や名誉棄損などを根拠に、大家さんは損害賠償を求められる可能性があります。
借主の部屋で長時間督促を続ける
貸主の部屋に入り、長時間にわたり督促行為を行った場合、貸主の私生活の侵害を主張される恐れがあります。また、居室内での督促が強引だった場合、住居侵入罪、不退去罪などに問われる可能性もあります。
支払い義務のない人に請求すること
支払い義務のない人(保証人ではない親族や同居人など)に家賃の支払いを求めた場合、不当請求として違法性が問われる可能性もあります。
部屋の鍵を勝手に交換する
家賃滞納を理由に、大家さんが無断で借主の部屋の鍵を交換した場合、重大な違法行為となる可能性が高いでしょう。住居権侵害や不法行為のほか、場合によっては住居侵入罪に問われる恐れがあります。相手が家に帰れずに費用が生じた場合はその賠償責任や、慰謝料支払の責任を負う場合があります。
家賃滞納は迅速に!
弁護士なら明渡と回収の同時実現を目指せます
家賃滞納の時効は5年ですが、意外にこの「5年」という期間は短いです。すでに滞納期間が長期に及んでいるのなら、速やかに督促して裁判を起こし、時効の進行を停止することが重要です。
滞納が継続している場合、一ヶ月経過するごとに家賃相当額の損害が拡大していきます。実効性ある債権回収の行動をすぐに開始しなければなりません。迷った場合には、早めに弁護士へ相談しましょう。
家主様の味方です
家主様の相談を受ける
赤坂見附法律事務所では、私・水田 匡之が不動産賃貸関係のトラブル(家賃滞納、契約違反)を積極的に取り扱っております。
賃貸借契約は貸す側・借りる側双方にとって重要性が高く、かつ関係が長期間継続することもあります。
その結果、トラブルが生じた場合の損害・影響は大きく、他の分野に比べても、迅速・適切な解決が求められます。
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