家賃滞納における支払督促・少額訴訟
入居者が家賃を滞納した場合、その回収に利用できる手続として、裁判所の、支払督促や少額訴訟を利用できるのではないかと考えることもあると思います。
しかしながら、結論から述べると、これらの手続をとるメリットはあまりありません。
なお「少額訴訟」というのは単に少額な訴訟という意味ではありません。通常訴訟とは異なる「少額訴訟」という特殊な訴訟手続が、民事訴訟法上に規定されています。
少額訴訟は訴額が60万円以下の場合にのみ利用できる手続ですので、少額という点は間違いではありませんが、例えば「訴額が30万円の通常訴訟」もありますので、注意が必要です。
支払督促・少額訴訟のデメリット
支払督促・少額訴訟は建物の明渡しを求められない
支払督促及び少額訴訟は、いずれも簡易裁判所における手続ですが、いずれも、金銭債権(金銭の支払を求める場合)のみを対象としており、建物の明渡しを求める場合には利用できません。
したがって、家賃滞納において家主が求める、家賃支払と建物明渡のうち、対象は家賃支払のみです。
入居者に財力がなければ無意味
本来、金銭債権を交渉ではなく法的手続(支払督促・少額訴訟もこれに含まれます)を用いて請求するほぼ唯一の目的は、支払を強制できるからです。
すなわち、相手が払わない場合に、相手の財産を差し押さえて強制的に支払わせることができます。これこそが法的手続の目的なのです。
しかし、家賃という優先順位が高い支払すらできない以上、入居者には財産がない場合がほとんどです。したがって、金銭債権の法的手続をとることは、入居者を相手にする場合はほとんど意味がありません。
通常訴訟への移行で時間稼ぎされる
対象債権が金銭債権に限られるため、家賃滞納の場面での支払督促や少額訴訟の出番はほとんどありません。
しかも、金銭債権(家賃)回収の手段としても、通常訴訟に比べて有利とは限りません。なぜなら、支払督促や少額訴訟は、相手が異議(移行)を申し立てれば、通常訴訟に無条件に移行してしまうからです。
たしかに、相手が黙って手続に従えば、通常訴訟より少し早く終わる可能性もあり、他にも多少は有利な点もあります。しかし、相手がいったん異議を出せば、そこから通常訴訟に移行します。最初から通常訴訟を起こすよりも確実に解決が遅れます。
いまやインターネットで誰もが調べられる時代ですので、異議申立てで時間を稼げると相手が気付き、長期化するリスクは大きいと言えます。
支払督促・少額訴訟を検討する場合
連帯保証人への請求
入居者が家賃滞納をしている場合、ほぼ例外なく入居者には財産がほとんどありませんが、連帯保証人には財産がある場合は多いです。連帯保証人に対して、支払督促や少額訴訟を利用して支払を求め、強制することは、場合によっては有効かもしれません。
もっとも、早期に明渡訴訟も行う必要があり、明渡しと賃料支払を通常訴訟で行う方がよい場合が多いと思われます。
相手にプレッシャーをかけたい場合
通常、弁護士は支払督促や少額訴訟は利用しません。なぜならこれらは一般の方向けに定められた手続だからです。
解説された書籍等も多く、自分でやりたい、という方にとっては、通常訴訟よりも手続をとりやすいかもしれません。
単に文書や口頭で支払を求めるには限界があり、相手に何らかのプレッシャーをかけたいという場合は、自身で利用してみるのはよいでしょう。
家賃滞納は原則として通常訴訟によるべき
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監修弁護士のコメント
水田弁護士
家賃滞納の最も確実かつ効果的な解決は
建物の明渡しです。
例外として、相手が比較的短期間に任意に払ってくれば、継続することもありますが、そうでない限りは退去させることが解決のために最も重要です。
そうすると、明渡請求ができず、期間も通常訴訟以上にかかる可能性が高い、支払督促や少額訴訟を利用することはまずありません。
当事務所では、いかに速やかに通常訴訟を提起し、判決を得て、明渡しを実現できるか、という姿勢でご依頼に臨んでいます。
インターネットには様々な情報があり、適切な手段を選ぶのは難しいですが、是非プロにご相談いただくことをお勧めします。
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