賢い家主の戦略室家賃を払わない人を追い出す方法とは
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失踪・行方不明の入居者への対応

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水田匡之先生

水田 匡之
弁護士

入居者の失踪・連絡不通でお困りの大家さんへ

入居者と連絡が取れず家賃だけが滞納していく状況は、大家様にとって非常に大きな不安材料となります。ただ、「失踪したのだから」と勝手に室内を片付けたり鍵を交換したりするのは絶対にやめてください。自力救済は法律で禁止されており、後から損害賠償を求められる危険があるからです。本人が不在のままでも、公示送達と強制執行という正式な手続きを踏めば、順調に進んだ場合3〜4ヶ月ほどで空室に戻すことができます。法的に正しい手順を踏むことが、結果的にはトラブル解決への近道となります。

入居者が失踪・行方不明になった際の
正しい初動対応

ステップ1:電話・メール・連帯保証人・勤務先への確認

入居者への連絡が取れなくなったからといって、すぐに行方不明と判断するのは早計です。まずは家賃の滞納や郵便受けの滞留、電話・メールへの反応がないなど、いくつかの兆候が重なっているかを確認します。同時に、緊急連絡先や連帯保証人、勤務先にも連絡を取り、入居者の状況を知らないか尋ねましょう。

長期の旅行や出張の可能性もあるため、滞納が発生していない段階で急いで動く必要はありません。ただし、室内で倒れていたり、緊急入院していたりする可能性も考慮し、連絡が長期間取れない場合は次のステップに進みます。

ステップ2:現地の確認

現地に赴き、電気・ガスメーターの数値や動きを確認します。数値が変化していない場合は、長期間室内に人がいない可能性が高いといえます。あわせて郵便受けの状態も確認し、郵便物が溜まっていないか、公共料金の請求書や督促状が放置されていないかをチェックしましょう。これらの状況が、入居者が長期不在である可能性を客観的に判断する材料となります。

ステップ3:室内へ立ち入る際は「警察官の立ち会い(安否確認)」を依頼する

現地確認をしても安否が判然とせず室内へ立ち入る必要が生じた際には、必ず警察官の立ち会いを依頼します。大家が独断で合鍵を使って室内に入ることは、不法侵入や住居侵入罪に問われるおそれがあるので注意してください。

所轄の警察署へ事前に相談し、安否確認の目的で立ち会いを依頼したうえで、可能であれば管理会社など複数名で立ち合いを行うようにしましょう。

行方不明の借主を合法的に解約・明渡させる方法

公示による意思表示

借主と連絡が取れないことを理由に契約解除の通知を届けられない場合には、民法98条に基づく「公示による意思表示」を利用します。簡易裁判所に申し立てたうえで、契約解除の通知書を裁判所の掲示場に情報を掲示し、官報に掲載してもらう手続きです。

申立てには、住民票や不在籍証明書、内容証明郵便が届かず返送された書類など、借主の所在が不明であることを裏付ける資料が必要になります。掲示や官報掲載から2週間が経過すると、実際に借主が通知を目にしていなくても、解除の意思表示が到達したものとみなされます。

公示送達

公示による意思表示で契約を解除した後は、建物明渡請求訴訟を提起します。この際も訴状を借主に届けられないため、訴訟上の「公示送達」という制度を利用します。公示送達とは、裁判所の掲示場に訴状の内容を掲示することで、法律上は借主に訴状が届いたものとみなされて訴訟手続きを進めることができる制度です。

なお、公示による意思表示と公示送達は、いずれも「届かなくても届いたとみなす」という点で共通しているものの、前者は契約解除の通知、後者は訴訟の書類という点で対象が異なります。

欠席判決

訴状が公示送達され、訴訟が提起されていることを借主が知らないまま期日を迎えれば、指定された期日に借主が出頭することはありません。借主からの反論がない以上、裁判所は家主側の主張をそのまま認め、明渡しを命じる判決を出す流れとなります。これを欠席判決といいます。

借主からの反論がない分、通常の訴訟より比較的短い期間で判決に至るケースが多く見られます。

強制執行

判決が確定しても借主が任意に部屋を明け渡さない場合は、裁判所に強制執行を申し立てます。強制執行の申し立てに基づいて執行官が現地に赴き、室内に残された家具や家財などの残置物を運び出し、法的な手続きに沿って処分します。

なお、強制執行は、家主が独自の判断で残置物を処分する自力救済とは異なり、裁判所の関与のもとで適法に明渡しを実現する方法です。

対応時の注意点

契約書上の「追い出し条項」は無効

賃貸借契約書に、家賃滞納や行方不明になった場合に、明渡しがあったとみなして、家主が賃借人の意思にかかわらず、内部の物品を勝手に処分したり、鍵を交換したりすることが可能と規定されていることもあるかもしれません。しかし、このような規定(「追い出し条項」などと呼ばれます。)は無効とされる可能性が高く、事後に損害賠償(慰謝料等)の請求を受けるおそれがあります。

契約書の文言を形式的に解釈せず、法的手続を粛々と進めることが必要です。

自力救済禁止の原則

日本において、自力救済、すなわち法的手続によらずに権利を実現することは、原則として認められていません。契約書の規定や法律に則って判断した場合に家主が退去を求められる場合であっても、裁判手続を経ずに勝手に撤去等を行うことはできません。裁判手続を経て判決を得ていても、その執行も勝手にすることはできず、執行官による強制執行手続を経る必要があります。

たしかに時間や費用がかかりますが、適切な方法をとらなければ違法となり、民事上、損害賠償を求められたり、刑事上の責任(住居侵入罪や器物損壊罪等)を問われたりしますので、必ず正しい方法をとるようにしてください。

なお、連絡がとれないからと、玄関ドアなど他の入居者や通行人が見られるような場所に滞納や立退きに関する貼り紙を貼ることも、名誉毀損となり民事・刑事上の責任が問われる場合がありますので、絶対に行わないでください。

失踪者の所在調査方法

住民票の除票・戸籍の附票を取り付ける

借主の住民票が除票されている場合、市区町村役場で「住民票の除票」や「戸籍の附票」を取得すると、転出先の住所が判明することもあります。個人情報にあたるため、原則として家主自身による請求はできませんが、弁護士に依頼して「職務上請求」の制度を利用すれば、必要な範囲で情報を取得することが可能です。

現地調査

近隣住民への聞き込みを行うと、借主の引っ越し時期や行き先の手がかりが得られる場合もあります。あわせて、警察官立ち会いのもとで室内を確認した際には、郵便物やカレンダーなど生活痕跡を撮影しておけば、後の訴訟で所在不明を証明する資料として役立つことがあります。

【注意】室内で借主が
「死亡(孤独死)」していた場合の対応

相続人がいる場合

室内で借主が死亡していた場合、賃貸借契約は相続人に承継される形となるため、滞納家賃の請求や解約の意思表示は相続人に対して行います。

なお、相続人が複数いる場合は、そのうちの一人だけに通知しても効力が生じません。相続人全員に催告や解除通知を送付することが必要です。

相続人が全員「相続放棄」した場合や不在の場合

相続人が全員相続放棄をした場合や、相続人の存在自体が不明な場合は交渉する相手がいなくなります。この場合、家庭裁判所に申立てを行い、「相続財産清算人」を選任してもらったうえで、選任された清算人が窓口となって契約解除や残置物の取扱いについて手続きを進めることになります。

未払い家賃と残置物処分費用・
原状回復費用の回収方法

連帯保証人(または家賃保証会社)への即時請求

契約時に連帯保証人を設定している場合や家賃保証会社を利用している場合は、滞納家賃や原状回復費用について速やかに請求します。保証会社によっては、夜逃げや失踪を保証の対象外としているケースもあるため、契約内容を事前に確認しておくことが大切です。

敷金の充当と本人の財産(預金・給与)への差し押さえ

敷金を預かっている場合は、まず未払い家賃や原状回復費用に充当します。それでも不足する場合、借主本人の預金や給与を差し押さえる方法もありますが、これには裁判で判決を得るなど、差し押さえの根拠となる法的な証明(債務名義)を得ていることが前提となります。

まとめ:入居者の失踪・行方不明トラブルは
放置せず早期に弁護士へ相談を

入居者の失踪や行方不明が生じた場合、状況を放置すればするほど空室期間が延びていきますが、その間も維持管理費や滞納家賃は積み重なっていきます。事態を打開するためには公示送達などの専門的な手続きが必要となるため、自己判断で対応を先延ばしにせず、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

赤坂見附法律事務所では、家主向けの無料相談を実施しているほか、案件の状況に応じた無料受任査定も行っています。入居者の失踪でお困りの場合は、まずは電話やHPから気軽に相談してみてください。

監修
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水田匡之先生
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水田 匡之先生

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