入居者が夜逃げした
入居者に夜逃げされたら!
大家さんが最初に行うべき初動対応
安否確認と現場確認
入居者と連絡が取れない状態が続く場合、まずは入居者の安否確認が必要です。ただし、大家や管理会社が独断で鍵を開けて室内に入ると、住居侵入罪に問われるおそれがあるため、必ず警察官の立会いを依頼したうえで、管理会社とともに現地を確認してください。
生活家電や衣類が持ち出されているなど、夜逃げの可能性が高いと判断された場合は、失踪・行方不明になった入居者の強制退去の手続きへと進みます。
連帯保証人・緊急連絡先への連絡と状況ヒアリング
安否確認・現場確認の後、契約時に登録された連帯保証人や緊急連絡先に、速やかに連絡を取りましょう。入居者と最近連絡を取った時期や、生活状況について変わった様子がなかったかをヒアリングし、夜逃げに至った経緯や現在の所在について手がかりを集めます。
連帯保証人と連絡がつかない場合は事態が長期化するおそれがあるため、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
家賃保証会社への事故報告と保証適用範囲の確認
家賃保証会社を利用している場合は、契約書に定められた期限内に事故報告を行う必要があります。報告が遅れた場合、代位弁済を受けられなくなるおそれがあるため注意してください。
あわせて、保証範囲が未払い家賃のみか、残置物の撤去費用や訴訟費用まで含まれるかを契約内容で確認しておきましょう。
大家側が罪に問われる
「自力救済」のリスクとは?
勝手に鍵を変える・荷物を処分すると「住居侵入罪」「器物損壊罪」に
家賃を滞納しているという事実があっても、大家が無断で鍵を交換したり、部屋に立ち入って荷物を処分したりすることは認められません。賃借人が現に住んでいる部屋である以上、正当な理由のない立ち入りは住居侵入罪に、残置物の処分は器物損壊罪や窃盗罪に問われるおそれがあります。
無断の鍵交換で入居者を締め出す行為が不動産侵奪罪にあたるとされた例もあるため、必ず法的な手続きを踏んで対応してください。
契約書に「残置物処分の同意条項」があっても無効になる理由
賃貸借契約書に「滞納時は残置物を処分してよい」といった条項があっても、明渡しそのものを合意したものとまでは認められにくく、条項の存在だけで大家の行為が合法とされるわけではありません。過去の裁判例でも、残置物廃棄条項があったケースについて、賃借人の占有や所有権を違法に侵害する自力救済にあたると判断された例があります。
同意条項を過信せず、あらためて本人の同意を得るか、法的手続きを経ることが必要です。
夜逃げされた大家側が逆に損害賠償請求されるケース
自力救済にあたる行為を行うと、大家側が入居者から慰謝料などの損害賠償を請求されることがあります。実際の裁判例では、無断の鍵交換によって入居者が住居を失った事案で、数十万円規模の慰謝料の支払いが命じられたものもあります。
滞納や連絡不通という事情があっても賠償責任を免れるとは限らないため、感情的な対応は避け、専門家に相談しながら進めることが重要です。
夜逃げした入居者を罪に問うことはできる?
家賃滞納・夜逃げは原則として「民事上の債務不履行」
入居者が家賃を滞納したまま夜逃げをしても、原則として刑事事件として罪に問うことはできません。滞納は民法上の債務不履行にあたり、貸主は入居者に対して未払い家賃の損害賠償を請求できるものの、対応はあくまで民事上の手続きに限られます。
契約解除や明渡しを求める場合も、督促や訴訟など法律に定められた手順を踏む必要があります。
警察が動いてくれない(民事不介入)理由と例外
家賃滞納は当事者間の契約トラブルであるため、警察は「民事不介入」の原則により基本的に介入しません。ただし、最初から家賃を支払う意思がないまま賃貸借契約を結んでいたと立証できる場合は詐欺罪にあたる可能性があり、例外的に刑事事件として扱われる可能性もあります。
もっとも、意図の立証は容易ではないため、まずは民事手続きによる回収を検討するのが現実的です。
連絡が取れない入居者の部屋を
合法的に明け渡す「法的手段」の流れ
ステップ1:住民票の除票調査や現地調査による「行方不明」の立証
賃借人と連絡が取れない状態が続く場合、まずは行方不明であることを客観的に示す証拠を集めます。住民票の除票や戸籍の附票を取得して転出先を確認するほか、現地を訪れて郵便物の滞留状況や電気・水道メーターの動きを記録し、居住実態がないことを裏付ける調査を行います。
ステップ2:相手がいなくても裁判を進める「公示送達」の活用
相手の所在が最終的にわからない場合でも、訴状などの送達方法として「公示送達」の制度を利用すれば、裁判所の掲示板に一定期間掲示することで送達があったものとみなされ、相手不在のまま訴訟手続きを進めることができます。
ステップ3:裁判所を通じた「建物明渡請求訴訟」と勝訴判決
契約解除の意思表示と督促を経ても入居者から反応がない場合は、裁判所に建物明渡請求訴訟を提起します。被告が出廷しない、あるいは争わないケースの場合は、審理を経て勝訴判決を得て法的に明渡しを求める権利が確定します。
ステップ4:「強制執行」と残置物の合法的な処分手続き
勝訴判決が確定しても入居者が任意に退去しない場合は、執行官による強制執行を申し立てます。執行官が明渡しの催告・断行を行い、残された家財は所定の保管期間を経たうえで、売却または廃棄という形で合法的に処分されます。
未払い家賃と残置物の処分費用は
誰から回収できる?
連帯保証人への請求と回収の上限
連帯保証人がいる場合は、未払い家賃や残置物処分費用を連帯保証人に請求できます。ただし、個人が連帯保証人となる契約では「極度額」の定めがあり、契約書に記載された上限額を超える請求はできません。極度額の記載がない契約は保証契約自体が無効となるため、まず契約書の内容を確認しましょう。
家賃保証会社がカバーしてくれる範囲と免責事項
家賃保証会社を利用している場合、契約プランによっては未払い家賃だけでなく、原状回復費用や明渡訴訟費用まで保証の対象になることがあります。ただし、事故報告の遅れや対象外項目については免責となるケースもあるため、契約時には保証範囲と免責事項を確認しておくことが重要です。
夜逃げした本人に対する「給与や預金口座の差し押さえ」
訴訟で勝訴判決を得ても夜逃げした本人が支払いに応じない場合は、判決に基づいて給与や預金口座を差し押さえることができます。ただし、勤務先や口座情報など差し押さえ先の特定が必要であり、財産が判明しない場合は回収が困難になることもあります。
まとめ:夜逃げ・行方不明トラブルは
自己判断せず弁護士へ
夜逃げや行方不明のトラブルは、対応が遅れるほど空室期間が伸び、家賃収入の損失や処分費用の負担が膨らみます。自己判断で鍵の交換や荷物の処分をすると、かえって法的リスクを負うおそれもあるので注意してください。トラブルの早期解決と適法な明渡しのためにも、まずは弁護士へ相談することをおすすめします。
家主様の味方です
家主様の相談を受ける
赤坂見附法律事務所では、私・水田 匡之が不動産賃貸関係のトラブル(家賃滞納、契約違反)を積極的に取り扱っております。
賃貸借契約は貸す側・借りる側双方にとって重要性が高く、かつ関係が長期間継続することもあります。
その結果、トラブルが生じた場合の損害・影響は大きく、他の分野に比べても、迅速・適切な解決が求められます。
ぜひ、家賃滞納でお困りの家主様はご相談ください。
家主様による相談は無料です。全国で最短翌日対応しておりますので、ご安心ください。
水田 匡之
弁護士
「夜逃げ」されたら、
感情ではなく法的に対応することが大切です
突然の夜逃げは、大家さんにとって大きなショックであり、怒りや焦りを感じるのも当然のことです。しかし、その勢いのまま部屋の荷物を勝手に処分してしまうと、「自力救済」として住居侵入罪や器物損壊罪に問われたり、逆に損害賠償を請求されたりするおそれがあるので注意してください。感情的な対応は避け、まずは落ち着いて状況を整理していきましょう。
一見遠回りに見えても、公示送達や強制執行などの法に則ったステップを一つずつ踏めば、結果としては最短で次の入居者を募集できる可能性が高まります。